ちょっといい話
- 公開日
- 2023/01/12
- 更新日
- 2023/01/12
お知らせ
それアンタと飲むのを楽しみにしとったんやで
俺は親父が好きじゃなかった。お袋とだったら何でも話せるのに、親父と本音で話したことなんてなかった。
親父は、俺が18のとき死んだ。心臓が急に止まったらしく、何の処置もできないまま死んだ。その時は、涙は出なかった。ただ、泣きじゃくるお袋を可哀想だとは思った。
俺が21のとき、「いい加減親父の部屋を片付けよう」ってなって、家族で片付けていた。俺はワインを見つけた。俺が中学の修学旅行で土産に買ってきたものだ。お袋は言った。「お父さんな、それアンタと飲むのを楽しみにしとったんやで」。何故か涙が出てきた。
俺は親父の墓前でそれを飲んだ。