ちょっといい話
- 公開日
- 2022/12/09
- 更新日
- 2022/12/09
お知らせ
俺がぶん殴ってやるよ
田舎の祖母が入院してるので実家に数日戻ってきた。
祖母はあんまり長くないらしい。祖父母は九州に住んでいて、祖父は完全に頑固一徹の昔ながらの親父って感じ。「男子厨房に入らず」を徹底して、晩酌は日本酒(必ず熱燗)。当然、すべて祖母が準備。熱燗がちょっとでもぬるいと、口をつけた後、「ぬるい」と一言だけ言い、無言で祖母に温めなおすよう指示。祖母は「すみません」と言い、温めなおす。祖父は祖母を怒鳴りつけるということはなかったが、とにかく一貫してそんな態度だった。小さい頃から細々とよく働く祖母を呼びつけて、召使のように扱う祖父をみて、何だか理不尽なものを感じていた。その反動か、俺は小さい頃から母親の手伝いをよくやったし、今も家事を積極的に手伝うようにしている。
その祖母が先月いきなり倒れたらしい。検査の結果「癌」発見。しかももう手遅れで、「このまま…」という方針に決まった。で、連休明けて仕事が一段落して休暇もらって行ってきたんだが、実家帰ってびっくりした。祖父が、連日祖母の病院に朝からいっているらしい。ほとんど1日病室で2人で過ごしているそうだ。病院に行ったら、祖父はいなかったが、しばらくしたら祖父が帰ってきて、その手にはプリン。祖母が食欲が落ちてきたので食べやすいものを、と思って買ってきたらしい。見ていると祖父がよく動く。鞄から祖母の着替えを出したり、ちょっとした買い物や何やと……。俺がそろそろ帰ろうかとしていると、祖父がいきなり「そうだ。せっかくだから写真を撮ろう」と言い出した。祖母が「こんな痩せてガリガリの写真なんて撮らないでください。葬式には若い綺麗な頃の写真を使ってくださいね」と冗談めかして言うと、祖父は「病人だし、飯も食わんのだからガリガリなのは当然だ。今のお前が綺麗じゃないと言う奴がいたら俺がぶん殴ってやるよ」と。祖母は「まぁまぁ」なんて笑ってたけど、ちょっと泣いてたんだよな。
何だかんだ言いながら、この2人は夫婦なんだなぁと思ったよ。