学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/10/26
更新日
2022/10/26

お知らせ

   小旅行、地図もお金も何も持たずに…… 

 夏休みに自転車でどこまで行けるかと小旅行。計画も、地図も、お金も、何も持たずに。国道をただひたすら進んで行った。。途中大きな下り坂があって、自転車はひとりでに進む。ペダルを漕がなくても、何もしなくても……。ただ、ただ気持ちよかった。自分は今、世界一早いんじゃないかと思った。子ども心に凄く遠い所まで来た事を知り、一同感動。滝のような汗と青空のもとでの笑顔。しかし、帰り道がわからず、途方にくれる。不安になる。怖くなる。イライラする。当然けんかに。「泣いてね〜よ」と、全員赤い鼻して、目を腫らして強がってこぼした涙。交番で道を聞いて帰った頃には、もう晩ご飯の時間も過ぎてるわ、親には叱られるわ、蚊に刺されるわ、自転車は汚れるわ……。でも、次の日には全員復活。瞬時に楽しい思い出になってしまう。絵日記の1ページになっていた。
 大人になってあの大きな下り坂を、電車の窓から見下ろす。家から電車でたかだか10個目くらい。子どもの頃感じたほど、大きくも長くもない下り坂。でも、あの時はこの坂は果てしなく長く、大きかった。永遠だと思えるほどに……。今もあの坂を自転車で滑り落ちる子ども達がいる。楽しそうに嬌声を上げながら。彼らもいつの日にか思うのだろうか。
 今、大人になってどれだけお金や時間を使って遊んでも、あの大きな坂を下っていた時の楽しさは、もう2度とは味わえないと……。もう2度と、友達と笑いながらあの坂を、自転車で下る事はないだろうと……。あんなにバカで、下らなくて、無鉄砲で、楽しかった事はもう2度とないだろうと……。