学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/09/30
更新日
2022/09/30

お知らせ

   お父さんとお母さん、どっちにつく 

 私には父と母と中学1年生の弟がいて、私が高2の頃まではごく普通で平凡な生活を送っていた。多分、私が高3になった頃から両親がお互い何も話さなくなっていた。気付いたときには、家族みんなで笑って食事することも、家族みんなで寝ることも、みんなで旅行に行くこともなくなってた。一番大好きだった場所が、いつの間にか嫌いになって、家にいるだけで息がつまるようになり、自分でも知らないうちに親にも気を使うようになっていた。そんな毎日が続いて、今までありえなかったことが「当たり前」になってしまい、そんな家族が嫌で私は家を出て、しばらく家には帰らなかった。
 そんなある日、いつもなら何も言わない母から「帰っておいで」のメール。とりあえず理由を聞いた。返ってきたメールには、「離婚」という2文字。今まで考えたことがなかった親の離婚。いつか家族が元に戻る日が来るのを、勝手に信じていた自分が情けなくて…。悔しくて、悲しくて、ひたすら涙があふれた。
 やっと落ち着いてから家に帰ると、私は何も言えずに、ただ立っているのが精一杯だった。しばらくすると、母が優しい声で「しほ」と言った。私は、震える声で「…はい」と返事をし、椅子に座った。何秒か沈黙が続き、自分の心臓の鼓動と時計の秒針だけが、静かに聞こえていた。緊張感の中、ようやく父が口を開き「…ごめんな」と呟いた。そのあと母が言った言葉は「2人とも、お父さんとお母さん、どっちにつく?」
 必死で涙をこらえて心の中で泣いていた。そして、見つけた私の方程式は、『2−1=0』。2から1を引いちゃうと、もう何にもなくなっちゃうんです。だから私はどちらも選びませんでした。と言うより、選びたくなかったんです。毎日、一生懸命働いてくれたお父さん。私を産んでくれて、18年間育ててくれたお母さん。自分には、そんな2人を選ぶ資格なんかないと思いました。
 結局、戸籍上は母の方になったけれど、私は彼氏と結婚することにしました。今では月に2、3回程度ですが、父とご飯を食べに行ったり、母と買い物に行ったりしています。でもやっぱり寂しくて、彼氏や友達の前だけは我慢しきれずに泣いてしまうこともあるけど、両親が幸せなら私はそれで充分だと思いました。家族は、離れ離れになっても絶対に途切れることのない大きなものなんだなぁと改めて実感することができました。