学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/04/14
更新日
2022/04/14

お知らせ

目の前の命をすくい上げられるよう、いつも覚悟を改める 

 阪神淡路大震災。あの大揺れはまさに未知の衝撃だった。当日、不精でコタツ入ったまま寝てたのが幸いした。頭側にあった本棚がコタツにのしかかる様に倒れ、そこに更に別の棚や家具が重なり、屋根等重量物の直撃は避けられ、結果的に俺を守る盾になってくれた。どれほど時間が過ぎたか、いつの間にか揺れは収まっていたが、身動きは当然とれなかった。それからはとにかく必死に叫んだ。狂いそうだった。「誰かいるのか」と返事が聞こえた。俺は、必死に助けを求めた。「おい、ここに人がいる、手伝ってくれ」と周囲に呼び掛けてくれた。それから数人の男性が四苦八苦の末、俺を外に引きずり出してくれた。家全体が、斜めに傾いてたんだが、俺は力任せに引っこ抜かれた。
 外に出て俺は、周囲の光景に絶句した。地獄がそこにあった。「大丈夫か、何ともないか」の声に我に返り、助けてくれた数人の男性に、俺は土下座し、泣きじゃくりながら感謝した。「気にするな、困った時は、お互い様だろ」と肩を叩いてくれた男性の手は、手に限らず全身が傷だらけの血まみれだった。「何でそんなになってまで……」と泣きながらようやく絞りだしたら、「腕の1本や2本で人の命が助かるなら、安いもんだろう」と。
 あの大地震の物理的な破壊力。住み慣れた街の変わり果てた姿。絶体絶命の窮地。いずれもこれ以上ない衝撃だった。だが、その地獄の中で尚、自らを省みずに他人を助けようとする人々がいた事。こんなに愕然とした事はなかった。年々マシになってきてはいるが、毎年あの日が近付いてくると、早朝にふと目が覚める事がある。あの悪夢を思い出しながらも、腕を失おうと目の前の命をすくい上げられるよう、いつも覚悟を改める。