学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/01/26
更新日
2022/01/26

お知らせ

   おにいさん、こんにちは 

 「○○おにいさん、こんにちは。僕のお母さんが、今度○○おにいさんのお父さんと結婚するので、僕と○○おにいさんはきょうだいになることになりました。僕はお父さんができることと同じくらい、自分におにいさんができるのがとてもうれしいです。」
 俺のおふくろは、俺が18のときに親父が迎えた後妻だが、本当のお袋だと思ってる。結婚が決まってから、初めて俺はおふくろと新しい弟に会った。半ズボンにブレザー、緊張した9歳の坊主から俺はこの手紙をもらった。俺も1人っ子で、本当は嬉しかったのに照れくさかったから、かなり無愛想にその手紙を受け取った。だけど新しい弟に会ったのはそれが最初で最後になった。弟はそれからすぐ事故で死んだ。
 俺は何でもしてやるつもりだった。中学に入って学校でいじめられたら、仲間連れてお礼参りしてやるつもりだった。タバコをおぼえ始めたら、ぶん殴って兄貴風吹かして叱り付けるつもりだった。単車だって俺のお古をくれてやって、兄弟で走りに行くつもりだった。「おにいちゃん」から「兄貴」に変わる年頃になったら、そして彼女ができたら、からかってやるつもりだった。そんな光景を夢に見てた。
 葬式では、おふくろよりも俺の方が激しく泣いた。友達が心配するくらいに、1人で立っていられないくらいに……。タイムマシンがあったら、ほんの1週間前の自分に会って胸ぐら掴んでやりたいくらいに後悔した。もっと優しくしてやればよかった……。どんな想いで手紙を書いて、どんなに緊張して俺に手紙を渡したんだろう……。俺は、弟の代わりにおふくろを大事にしている。この人こそが俺のおふくろだと思ってる。「俺のおふくろを粗末にすんじゃねえぞ、兄貴」「わかってらぁ、うるっせえよボケ」。弟とのそんなやりとりを、今でも空想しながらおふくろに接してる。生きていたら、俺の弟は今年の春、大学に入学していたはずだ。
 たった1回しか会わなかったが、俺には弟がいた。