「心のマスク」をはずして
- 公開日
- 2022/12/01
- 更新日
- 2022/12/01
学校日記
許可を得ましたので、第43回少年の主張全国大会〜わたしたちの主張2021〜で文部科学大臣賞を受賞された、山梨県北杜市立甲陵中学校3年生の平澤朋佳さんの作文を紹介します。
みなさん、マスクをつける日常へと変化したことで、今まで普通に行えていたコミュニケーションが上手くいかず、誤解が生まれてしまったという経験はありませんか。このような、情報を伝えた人の意図と受け取った人の意図が異なってしまうことを「ミスコミュニケーション」というそうです。
私の友人は、仲間からの相談を受けていた時、相手から「今笑ったでしょう」と言われてしまいました。しかし友人は笑うつもりなんてもちろんありませんでした。なぜそのような誤解が生まれてしまったのでしょう。その原因はマスクでした。お互いにマスクをしての会話だったので、表情を間違ってとらえられてしまい、誤解へと発展してしまったのです。まさにこれはマスクによる「ミスコミュニケーション」です。
今、社会ではマスクをつけることがモラルとして定着しています。感染拡大を防ぐ面ではこれはとても重要なことです。ですが私にはこのマスクが、まるで目に見える他人との境界線や壁のように感じてしまいます。
私も似たような経験をしました。小学校の頃の友人と偶然再会したときの出来事です。私は彼女との話が面白くて、笑いながら会話をしていたにも関わらず、彼女から冗談めいた口調で「顔が笑っていないよ。」と言われました。
「そんなことないよ。話、面白いじゃん。」
私は驚いてそう返しました。私は心から面白いと思って笑っていたのですが、相手にはそれが伝わらず、マスクをしたままでのコミュニケーションの難しさを痛感したのです。
学校でも、マスクをつけていることで先輩や新入生の顔がよくわからないという声が多く聞かれます。それを受けて私の所属する生徒会では、全校生徒の交流で何かできないかと考えました。そこで「DATA120」という活動をしようと決めました。120 とは全校生徒の人数です。全員に名前や趣味、最近の出来事などをプロフィールとして書いてもらい、マスクを外した状態での写真とともに掲示したのです。これによって、相手の趣味や考え方などを共有できたのはもちろん、「マスク姿も素敵だけど外した姿も可愛い」「イメージと違った顔をしているな」と、文字通り素顔を知ることができました。そして、学校にも柔らかい雰囲気と一体感が生まれたように感じました。
人と人との関係を紡いでいくには相手を理解することが重要であり、その手段の一つがコミュニケーションです。ですが、コロナウイルスによってマスク着用がマナーとなった今、顔の大半が隠れ表情がわかりにくくなったことで、コミュニケーションの質にも大きな変化が起こりました。それに伴い私たちは、よりはっきりとした感情の表現や相手の気持ちを理解しようとする心など、コミュニケーションの質を上げていく工夫が必要となってきているのではないでしょうか。
「人生の質はコミュニケーションの質である。」
アメリカの自己啓発家であり、アメリカ大統領など数多くの著名人を指導したアンソニー・ロビンズの残した言葉です。
私たちの心からは、コロナウイルスは感染しません。学校に行ってもマスク、電車に乗ってもマスク、どこを見てもマスクマスクの社会でも、いや、だからこそ、私たちは「心のマスク」を外しコミュニケーションの質、そして人生の質を高めていくことができるはずです。