ちょっといい話
- 公開日
- 2022/11/21
- 更新日
- 2022/11/21
お知らせ
まだ、使ってたんだ
反抗期の時の話しなんだけど、今でも忘れられない。
幼い頃からずっと片親で育ってきた私は、父親と2人暮らし。誰から見ても、宝物の様に私を大事に可愛がってくれた。そして、私のために一生懸命働いてくれてた。私の願い事は無理してでも、自分を犠牲にしてでも叶えてくれた。風邪の時には、仕事をさぼってでも、私の側に居てくれてた。私に寂しい思いは、させなかったと思う。2人きりだけど、クリスマスや誕生日も毎年してくれた。
けれど10代半ば、反抗期のせいで、父の優しさが凄くうざくなってきてしまった。心配される事や、口を聞く事、すべてがうっとおしくなった。私は毎晩、夜遅く帰って来て、父が心配しても、私は父に罵声しかあびせなかった。友達と遊ぶ事が楽しくて、だんだん家にも帰らなくなっていた。そんなある夜のこと。久しぶりに家に帰ると、私の分のおかずと一緒に、小さなケーキが置いてあった。それは、3日過ぎた私の誕生日のためのケーキだった。いつ帰って来るのか分からない私のために、毎日ご飯作って、ずっと待っていてくれてたんだと思ったら、切なくて悲しくて申し訳なくて涙が溢れてきた。そして無造作に置かれてた小銭入れ。ボロボロになった汚い小銭入れだった。それは、私が幼稚園の頃に父の日にあげたもの。「まだ、使ってたんだ」誰よりも何よりも、父は私のことを大切に思ってくれていた。父にとって私は宝モノなんだって思いが胸につきささって、父に対して優しくしてあげられなかった事にまた泣いた。
後から知った事だけど、私が小さい頃に書いた父の日のカードも、肌身離さず持っていました。その1件以来、私はちゃんと帰るようにはなりました。