学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/11/09
更新日
2022/11/09

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   1995年1月16日に戻りたい【阪神・淡路大震災のあと】  

 当時21の私と倫子はその日ちょっとしたことで喧嘩をしてしまった。普段なら隣同士で寝るのに、この日はひとつの部屋で少し離れて寝た。17日の朝、大きな揺れがあった。すごい音と共に屋根などが崩れてきた。運よく私も倫子も無事だった。しかし、2人の間には大きな瓦礫の壁があった。私は窓の近い側だったので、自力で出ることができた。私は、倫子を助けるために近所の方と合わせて、瓦礫をどけようと必死だった。ある程度作業が進んで、これなら助かると思った。しかしそのとき周りの人が「隣の家から火の手が上がっている」と言った。皆、ピッチを上げて作業をした。しかしそのとき、隣の家が崩れてきた。私も周りも、その場から反射的に離れた。そう、見捨ててしまった。「神はどうしてこのようなことをするのか」、「見捨ててしまった……」、「どうして自分も死ななかったのか」こんな言葉が頭をずっとめぐっていた。
 後日、瓦礫の山からともこの骨だけが見つかった。たった2メートルの距離の差だった。たった2メートルの距離の差が「1番大切な人」を失う距離だった。16日に喧嘩したことが、素直でなかった私が、最も失ってはならない「大切な人」を失う結果にしたのだ。喧嘩をしていなければ、2人とも助かったかもしれない。そして、見捨てることも……。 私は1995年1月16日に戻りたい。そして君と一緒にいたい。阪神大震災経験をしていない人にとっては分からないことだと思う。ただ、これから1月17日に阪神大震災の話題が出たときに、今さら……、とは言ってほしくない。そして、今恋愛をしている人に。あなたは大切な人を手放さないで下さい。
 後悔しても、すべて戻ってこないのですから……。