学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/10/31
更新日
2022/10/31

お知らせ

   愛する妻と抱くことのできなかった我が子

 私の話で命の誕生というのがどれほど尊いものなのか、奇跡であるのかを感じてほしい。そして愛する妻と、愛する子どもをお持ちのお父さんは、今を「当たり前」だと思わないでほしい。私たち夫婦をおそった話を伝えることで、胸に何か響くものがあればいいと思っています。
 私たち夫婦は、結婚10年目を迎えて、ようやく待望の赤ちゃんを授かることができました。エコーに写る小さな小さな我が子に、2人で感動して涙を流したのを覚えています。「この子を大切に大切に育てよう」と、2人が親になる決心をしたのもこの頃です。妊娠中の生活は気を付けなければならないことが多く大変でした。毎日の食事面や生活面で常にお腹の子を気遣いながらの生活は、緊張感がありながらもどこかワクワクした気持ちがあって全く苦ではありませんでした。妊娠5ヶ月を過ぎて、妻のお腹がちょっとずつ大きくなるにつれて、自分が親になる実感もわいてきました。
 大きなトラブルもないまま10ヶ月が過ぎました。あの日もいつものように、笑顔で妻は健診に向かいました。もしかしたらもう産まれてくるんじゃないかと思い、ソワソワして妻の帰りを待っていました。ですが、もう妻が帰ってくることはありませんでした。この手で抱くことを10ヶ月間待ちわびた我が子にも、1度も会うことができませんでした。死因は、常位胎盤早期剥離でした。妻も大量出血により死亡しました。原因は、はっきりとはわかっていませんが、高齢出産や高血圧などの人に比較的多いとされているようです。妻は基礎疾患もなく、高血圧や糖尿にも人一倍気をつけていました。常位胎盤早期剥離は通常のエコーでも気づきにくく、早期発見は難しいそうです。
 これから家族3人になる予定だったのに、気づいたら家には私1人取り残されていました。新しく迎え入れるはずだった我が子のために用意した服やおむつ、ベッドを見るたびに涙が溢れ、胸を締め付けられます。「なんで妻が、何でうちの子が……」と、何度も自分自身に問いかけました。けれどこれは誰が悪いんじゃない。誰しもが起こりうることです。たまたま私の妻が、私の我が子が常位胎盤早期剥離によってこの世を去ってしまった。
 これから出産を控えている人にとっては不安になるかもしれません。最後まで、決して油断せずに元気な赤ちゃんを産んでください。そして無事に生まれたことは決して当たり前なんかじゃない。命の誕生は奇跡なんです。そのことを忘れずに大切に大切に育ててあげてください。