ちょっといい話
- 公開日
- 2022/10/17
- 更新日
- 2022/10/17
お知らせ
家族
オレが小学生の時、事故で両親が死んだ。その後親戚中をタライ回しにされた。オレが「高校入学を機に1人暮らしを始めたい」と言うと、親戚のヤツは「好きにしろ」とふたつ返事でオレを放り出した。金も貰った。300万。家の代金や貯金とか、もっとあるはずだが、オレは何も言わずに飛び出した。何よりその場所が耐えられなかった。
そして、1人で暮らし始めた。高校2年の時に知り合った友達の家に、初めて遊びに行った。時間が遅くなって、晩ご飯をごちそうになった。友達の家は、親父さん、お母さん、友達、弟の4人家族だった。オレを入れて5人の食卓には、ごはん、味噌汁、肉じゃが、煮魚が並んだ。オレは「うまい、うまい!と連発して食べた。友達が「そうか、こんなん普通だよ」と言った。オレは「何言ってるんだ、こんなん毎日食べれるなんて羨ましい、炊きたてのゴハンなんてすっげーゼイタクだぞ」と返した。それを聞いていたお母さんが「○○くん、いつもどんなもの食べてるの」と聞いてきた。オレは「いつもバイト先で賄いを食べてます。家だとおにぎりとかパンとか、ラーメンとかです」と答えた。お母さんは「お母さんはいらっしゃらないの」と聞いたので、「あ、オレ、両親いないんす。事故で2人とも……」と、なるべく気を使わせないようにサラッと言ったつもりだった。ところがお母さんは、いきなりオレの手を握ってきた。オレがビックリしてると、涙目で「○○くん、困ったことがあったらうちに来るのよ」って言った。何だか分からないけど、泣けてきた。家族なんて欲しいと思ってなかったけど、その友達が本当に羨ましかった。この時のゴハンの味が今でも忘れられない。
それからもそいつの家にはバイトの休みの日にゴハンを食べさしてもらいに行った。いつもタダメシじゃ悪いから、1度お金を持っていったら、逆に怒られた。「子どもが余計な気を使わなくてもいい」って……。でもうれしかった。