学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/09/28
更新日
2022/09/28

お知らせ

   18日間、娘は良くがんばった 

 親と喧嘩をし、「出て行け」と言われ家を飛び出して6年。家を出て3年後に知り合った女性と結婚し、2年後に子どもができた。ものすごく嬉しかった。「母性愛がある」と同じように「父性愛がある」と気付いた。「子を愛さない親はいない」というのも知った。妻の検診の日は毎回産婦人科まで一緒に行った。初めて聞いた元気な心音に「父さんは、おまえのためにがんばる」と誓った。何もかもが順調だと思ってた。予定日の1ヶ月前に妻が破水をした。切迫流産の前兆だった。「妻も元気で何も問題なんてない」と思っていただけにビックリした。嫌な言葉、「八月子(やつきご)はもたない」が蘇った。詳しい検査をした時に、娘の心音に雑音が混ざっている事が分かった。母子ともに危険な状態になった為、緊急手術で帝王切開する事になった。
 よく晴れた10月に娘は生まれた。最初は小さく泣いたらしい。けど、自発呼吸ができなかったため、酸素供給するための管を通す事になった。その後の事は、よく覚えてない。どこからが現実で、どこまでが現実じゃないのか……。初めてNICUで見た娘の姿に、涙が出そうになった。娘にかけた最初の言葉が「生まれてきてくれて有難う」。初めて人前で泣いた。いろいろと医師から説明を受けた。「絶望」って眩しくも、真っ暗でもなかった。いつもの生活が、私と妻を追い立てた。娘は管から母乳も飲み、オムツも替えさせてもらい、名前も付けてやれたし、出生届も出してやれた。戸籍上も私の娘。可愛い。
 医師からの突然の電話。最初で最後、娘を抱っこしてあげれた。涙が出そうになった。
だけど泣かなかった。泣く必要は無いと自分に言い聞かせた。18日間、娘はよくがんばった。妻と2人で娘を荼毘に出し、小さな骨壷に骨拾いをした。やっと娘は父と母が住む家に帰ってこれた。