ちょっといい話
- 公開日
- 2022/09/13
- 更新日
- 2022/09/13
お知らせ
結婚と父の話
実家の両親に彼が結婚の申し込みをしに、挨拶に来た。会話は和やかで結婚の話にも触れていたし、両親も私と彼の結婚を祝福してくれていたが、彼は、「お嬢さんと結婚させてください!」のようなセリフを言えないでいた。彼は話を切り出すタイミングを失っている様子だった。結局、彼は確信の言葉を口にせぬまま宴は終了した。
私は彼を送るために玄関に先に出た。しばらくして、彼も玄関の方にやってきた。彼は両親にペコリと頭を下げて私の実家を後にした。私は彼を近くまで送っていった。すると、彼がポツリと言った。「お父さん、泣いていたよ」私はどうして父が泣いていたのか彼に尋ねた。「○○ちゃん(私)が、先に玄関に行ったでしょ。その時、俺、お父さんに『○○ちゃんを幸せにしますから』って言ったんだ。そうしたら、お父さんは俺の手を握って、薄っすら涙を浮べながら、『娘を宜しくお願いします』って言ってくれた」私はその話を聞いて、目頭が熱くなった。
その後、しばらくして私は彼と結婚した。たまに実家に帰ると、父は殆どお酒が飲めないのに、夫と酒を飲みたがった。後で聞いた話だが、父は親類に以前、「○○は嫁には出さん」と語っていたらしい。しかし、父は夫を本当の息子のようにとても可愛がってくれ、夫をいつも誉めてくれた。
結婚3年目の今年、父が他界した。夫は「お父さんにロクに親孝行をしてあげれなかったな・・・」と言った。私も、父に親孝行らしい事を殆どしてあげれなかった。でも父は、息子と一緒に酒を飲めることが出来て、幸せだったのかな……、と思うことが、慰めになっている。
