学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/07/15
更新日
2022/07/15

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   まだ、使ってたんだ

 反抗期の時の話しなんだけど、今でも忘れられない。幼い頃からずっと片親で育ってきた私は、父親と2人暮らしをしていた。友達や親戚、誰から見ても、宝物の様に私を大事に可愛がってくれた。そして、私のために一生懸命働いてくれてた。私の願い事は無理してでも、自分を犠牲にしてでも叶えてくれた。風邪の時には、仕事をさぼってでも私の側に居てくれてた。私に寂しい思いはさせなかったと思う。2人きりだけど、クリスマスや誕生日も毎年してくれた。けれど10代半ば、反抗期のせいで、父の優しさが凄くうざくなってきてしまった。心配される事や、口を聞く事、すべてがうっとおしくなった。私は毎晩、夜遅く帰って来て、父が心配してくれても、私は父に罵声しかあびせなかった。友達と遊ぶ事が楽しくて、だんだん家にも帰らなくなっていた。
 そんなある夜のこと。久しぶりに家に帰ると、私の分のおかず一緒に、小さなケーキがおいてあった。それは、3日前に過ぎた私の誕生日のためのケーキだった。いつ帰って来るのか分からない私のために、毎日ご飯作って、ずっと待っていてくれてたんだと思ったら、切なくて悲しくて申し訳なくて涙が溢れてきた。そして無造作に置かれてた小銭入れ。ボロボロになった汚い小銭入れだった。それは、私が幼稚園の頃に父の日にあげたもの。『まだ、使ってたんだ』誰よりも何よりも、父は私のことを大切に思ってくれていた。父にとって私は宝モノなんだって思いが胸につきささって、父に対して優しくしてあげられなかった事にまた泣いた。後から知った事だけど、私が小さい頃に書いた父の日のカードも、肌身離さず持っていました。その1件以来、私はちゃんと帰るようにはなりました。