学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/06/06
更新日
2022/06/06

お知らせ

   ごめんね、約束守れなくてごめんね

 俺が入院してた時、隣の小児科病棟に5歳くらいの白血病の男の子が入院していた。
 「生まれてから1度も外に出られない子だ」と聞いた。ある日、大声で泣く声がするので病室を覗いてみると、「点滴の注射が嫌だ」と泣いていた。看護婦さんが、「我慢してね。お注射して、早く元気になりましょうね。そして、おねえちゃんとお外で遊びましょう」と諭すと、べそをかきながらも「うん、分かった。約束だよ」と言って、必死に痛さに堪えていた。ふと病室を出て来た看護婦さんを見ると、目にはいっぱい涙が溢れていて、ナースステションの前でしゃがんで泣いていた。
 それから1週間後……。その子は亡くなった。「とても安らかに、眠るように亡くなった」と聞いた。誰も居なくなった病室で、あの看護婦さんが、あの子が寝ていたベッドの整理をしていた。「ごめんね、約束守れなくて、ごめんね……」と呟きながら、自分の涙で濡れたシーツを抱きしめていた。自分の死を知らずに、看護婦さんと外で遊ぶことを楽しみにして痛さに耐えていた男の子。死が間近であること知りつつ、必死に笑顔で励ましていた看護婦さん。
 病室に戻ったおれも涙が止め処なく流れた。