学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/03/01
更新日
2022/03/01

お知らせ

   祖父の手を握ると温もり

 幼い頃、祖父を慕っていた私は、よく一緒に寝ていました。私は、祖父のことをとても慕っていたし、祖父も可愛がってくれました。小学校は良好な関係でしたが、中学校に進学し中学3年になると、会話も少なくなりました。思春期が邪魔をして、祖父を嫌がっていたんです。それでも祖父は、可愛がってくれていました。やがて祖父は、私に何も言わなくなっていきました。当時の私は、学校や部活が居場所だと感じ、徐々に素行の悪い高校生になっていました。
 祖父が倒れたと聞いても、お見舞いに1度しか行きませんでした。その一度のお見舞いを、祖父は凄く喜んでいました。そんな関係のまま私は大学に進学し、祖父のことも忘れて学生生活をしていた頃、祖父が亡くなったと連絡をもらいました。
 すぐに病院に向かい、祖父の遺体を確認しました。もう長いこと、まともに会話をすることもなかった祖父なのに、もう声が聞けないと思うと涙が溢れそうになりました。気持ちの整理がつかない私に、両親は祖父が持っていたという1枚の写真を渡してきました。写真は小学校の頃、祖父と一緒に旅行に行ったときの写真でした。まだ私と仲がよく、祖父が私を肩車していたときのものです。祖父が大事に持っていた写真を見たとき、お見舞いに1度しか行かなかった事や今まで冷たい態度をとったことを後悔しました。私は、祖父のことを忘れてしまっていたのに、祖父は私のことを気にかけてくれていた、その事実を知ったとき涙が溢れて止まりませんでした。横たわる祖父の手は冷たく、もう温かくなることもありません。それでも祖父の手を握ると温もりを感じた気がします。
 月日が流れ、私も親になり子どもと毎日忙しく過ごしています。私によく似た子どもの成長を祖父の墓前に見せるため、毎年実家に顔を出すのが家族の恒例行事となりました。