学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/01/20
更新日
2022/01/20

お知らせ

   僕は笑った

 僕は、恋をした。好きになったきっかけは、高2の夏。僕がクラスでいじめにあって、生きる意味すらわからなくなって教室で泣いていた。その時に彼女がそっと僕に近寄って来て、「○○に涙なんて似合わないぞ。ほら、笑いなよ。私、笑ってるあんたの顔好きだよ。」と言ってくれた。それからは僕は、いじめられてもずっと笑ってた。
 それ以来ずっとずっと彼女を想い続けて、気がつけば高校の卒業が近づいていた。その間、何度も告白しようとした。でも好きだから、好きすぎたから失うのが恐くて実行はできなかった。しかし、卒業間近になって覚悟を決めた僕は、卒業式の日に彼女に告白することを決心した。卒業式の3日前の朝、いつものように彼女に「おはよう」を言おうと思教室を見回した。が、彼女の姿はなかった。入試も近いし、「今日は休みか」と思ったとき、担任の先生が暗い顔をしながら教室に入って来た。そして、いきなり僕たちに「××さん(彼女の名前)が昨日、学校の帰りに車にはねられ、今朝病院で亡くなりました」と告げた。何を言ってるのかわからなかった。状況が理解できない僕は、みんなが泣いてる中で泣くことすらできなかった。そしてお通夜の日、棺おけの中にいる清められた彼女の姿を見た時になって、ようやく涙がこみ上げてきた。祭壇目をやると、彼女の写真が目に映った。彼女は笑ってた。そのときふと彼女が僕に言ってくれたあの言葉を思いだした。僕は笑った。他の参列者の目には人の死を前にして笑顔を浮かべる僕はどう、映っただろうか、それでも僕は彼女の写真を見ながら笑った。
 彼女の死から2年が過ぎ、クラスで同窓会をした。その時にクラスの女子から高校のとき、「彼女が僕を好きだった」という事を教えられた。僕はその瞬間初めて泣いた。声をあげて泣いた。それからまた僕は笑った。