ちょっといい話
- 公開日
- 2023/02/21
- 更新日
- 2023/02/21
お知らせ
さんがにち
高校生1年になってすぐ、母が肺がんで入院した。親父と相談の結果、告知はしなかった。夏が過ぎ、秋が過ぎ、病気の劇的な進行とともに母も「もうこの病気は治らないことに気づき始めた」と思う。
そして年末、危篤状態になった。でも12月30日、意識を取り戻した。
母:今日は何月何日?
俺:12月30日だよ。
母:そうかい、ウチはねぇ、この町で3代愛されてきた八百屋だよ。
俺:うん、そうだね。
母:だからね、町の人に迷惑かけちゃいけないんだ。
俺:どういう意味だい?
母:せめて「さんがにち」が明けるまで、不幸は出しちゃいけない。あた
しなんかのためにみんなに正月早々やな思いをさせちゃいけない。
そう言ったきり、母は年が明けて1月4日の明け方まで眠り続け、そして旅立って逝きました。我ながら「すげぇ母親を持ったもんだ」と誇らしかった。やっぱね、もう、だめ、と思った時には母のことを思い出します。そうすると、まぁ、なんとかなる、うん。