学校日記

ちょっといい話

公開日
2022/09/22
更新日
2022/09/22

お知らせ

   1人娘の結婚式

 1人娘の結婚式。
 俺が嫁と結婚したのと同じ歳。当時、俺25歳、嫁33歳、娘13歳。娘は嫁の連れ子だったんだけど、多少ギクシャクしながらも数年過ぎた。子どもはあえてつくらなかった。娘の気持ちを考えたら、「子どもは娘1人いればいい」って事になった。
 突然、嫁が交通事故で逝った。娘17の時。突然2人きりになり、2人とも呆然……。これからどうしようと思った。生活の面では収入も安定してたし、娘も家事の一通りはできた。何の問題もないはずだったけど、嫁側の親戚が騒ぎ立てた。血の繋がらない29の男と17の女。ある意味カップルでもおかしくない歳の差だもんな。でも、俺は「娘は、間違いなく俺の娘だ」と思ってた。何よりも、嫁のたった1人の忘れ形見だ。俺が育てていく以外の選択肢は全く頭になかった。娘も「今更こんな足の臭いオッサンと、どーにかなるか」と笑ってた。当たり前の様に言う娘の気持ちが嬉しかった。それで2人で暮らしてきた。再婚なんか考えた事もなかった。それくらい娘に「穏やかな、幸せな時間」を与えてもらってた。
 娘に話があると言われた。「結婚したい人がいる」と……。娘は25になってた。次の日曜に相手の男に会った。娘を見る目が優しかった。こいつなら大丈夫だと思った。安心した。諦めもついた。披露宴では、「お母さんが亡くなった時、本当にどうしようかと思った。お父さんはまだ若かったから……。私がいたら絶対に足枷になると思ってた。だから、『これからも一緒に暮らすのが当たり前』みたいな態度でいてくれたのが、本当に本当に嬉しかった。私のお父さんは、お父さんだけです。今まで本当にありがとう。お母さんが亡くなってからも、今までずっと幸せな子のままでいられたのは、お父さんがお父さんだったからです」と娘が、しゃくりあげながら読む花嫁からの手紙を聞いて、涙がどっと溢れた。
 大変だったけど、父親って立場、選んでよかった。嫁と結婚してよかった。娘の父親になってよかった。1人になって部屋は、何か広くなっちゃったけど……。微妙な抜け殻感は否めないけど。今度はいつか生まれて来る孫の為に頑張ってみようかな。