ちょっといい話
- 公開日
- 2022/05/24
- 更新日
- 2022/05/24
お知らせ
彼女のすてきなお弁当
小学校高学年のとき、優等生だった。勉強もスポーツもできたし、児童会とか何かの代表はいつも役がまわってきた。もう1人のできる男子と2人で、担任には愛され、ひいきされていた。でもそれをいいことに私たち2人に面倒や責任を押しつける雰囲気もできていて、「やだなあ」と思いつつ、空気読んでこなす日々だった。
そんなある日、「自作のお弁当を作ってきて、皆の投票で優勝を決めよう」みたいな会が開かれた。「どうせみんな、親に手伝ってもらうのにくだらない」と思いつつ、私は敢えて適当な弁当を作ってきた。「ハンバーグと冷凍ポテトと何か」みたいな……。制作時間も短めで済む献立。優勝なんてどうでもよかった。当日、親が全面的に支援したであろう皆の弁当は、それぞれに美味しそうで大差はない内容だったと思う。私は、Mちゃんの彩りや栄養がきちんとしているお弁当に投票した。結果は、優勝と準優勝は私ともう1人の優等生の2人。結局みんな、いつもの通り「優等生に勝たせておけばいい」っていうことだったんだろう。Mちゃんの弁当は、大した順位じゃなかった。でも、私は知っていた。目立たないけどいつもニコニコして、優しいMちゃんの家は、父子家庭だということを……。彼女のすてきなお弁当は、お姉ちゃんと一緒に日々家事をこなしている、本当に彼女自身が自分で作った弁当だってことを。
「皆バカだ、担任もバカだ、何でわからないのか」と無性に悔しかった。グループが違うので普段はあまり話さなかったけど、そのときはMちゃんに「Mちゃんのお弁当に投票したんだよ」と伝えた。「ありがとう」と笑ってくれた。