ちょっといい話
- 公開日
- 2021/12/14
- 更新日
- 2021/12/14
お知らせ
ガイドブック
東京で単身赴任してたとき、連休とかにはいつも嫁が来て、家のことなどしてくれていた。母にも、「たまには東京来いよ」と言ってたんだけど、「人混みが苦手」だと決して来なかった。そんな母が脳梗塞で突然死んじゃって、呆然としたまま遺品を整理していたら、東京のガイドブックが出てきた。皇居とか、浅草とかベタなところに一杯赤鉛筆で線引いてあって、何度も読み返したらしくボロボロになってた。親父に聞いたら、「行きたかったんだけど、嫁の方ががいいだろう」って我慢してたんだそうだ。自分は肉が嫌いなくせに、俺の好きそうな焼肉屋とかにも一杯線引いてあって、俺と一緒に回るのを夢見てたみたい。俺は、お義理で誘っただけなんだけど、誘われた後は何回も何回も「息子が来い」と言ってくれたと喜んでいたらしい。一緒に行きたかった場所には、俺の名前が書いてあって、それがたくさんたくさん書いてあって…。死に顔を見たときよりも、葬式の時よりもすっごく泣いた。
田舎に戻った今でも、生きてる間に呼ばなかったこと後悔している。
